SK の開発者コミュニティサイトである DEVOCEAN に掲載された韓国語の記事で、SK planet の月例の社内技術共有プログラムである Data & Tech Committee で 2024 年 3 月に行われた講演をまとめたものである。記事は講演者自身の文章ではなく編集者によるまとめであり、講演者の許可を得て公開されている。当時開発者が利用できた生成 AI ツールを概観しており、GitHub Copilot を詳しく取り上げるほか、ChatGPT-4 の GPT Store と Code Interpreter、そして第三者による生成 AI ツールの調査から引いたより広い全体像を扱う。そのうえで、それらが生産性に与える影響について、講演者がシリコンバレーの知人から得た知見と自身の利用経験から学んだことを報告している。
記事の実質的な主張は、開発の形がどう変わるかに関するものである。記事は生成 AI 以前のサイクルを、スプリントでアジャイルに反復される「既存の」開発方式と呼び、それに対して、要求の直後に AI ボットが介入して人間とともにコードを生成し、レビューとデプロイは従来どおり続く「AI ベースの」方式を対置する。そこから記事の中心となる主張が導かれる。すなわち、人間がボットに与える指示や対話そのものが新たなソースコードになり、従来の意味でのソースコードを直接読むことは次第に少なくなっていく、というものである。
記事は、コーディングボットのあるべき姿についての枠組みも示している。講演者は、開発者が望む資質として、簡潔さ、信頼性、探究心、自己認識、パーソナライズを挙げ、これらは優れた人間の開発者に求められる資質と同じだと指摘する。ここでの探究心とは、指示をただ実行するのではなく、問題を理解するために聞き返すボットのことを意味する。講演者の見立てでは、当時のコーディングボットは最初の 2 つに寄っており、残りはまだうまく機能していないように見えたが、ジュニア開発者が時間とともに成長するのと同じように、いずれそれらも備わっていくと期待している。記事は最後に、生成 AI をめぐる訴訟と規制、そして講演者が開発者のキャリアについて予想することで締めくくられる。
要点
- 記事は「既存の」開発ライフサイクルと「AI ベースの」開発ライフサイクルを区別する。後者では、要求の直後に AI ボットが介入して人間とともにコードを生成し、レビューとデプロイは変わらない。
- 将来のソースコードは人間がコーディングボットに与える指示と対話になり、開発者が従来の意味でのソースコードを確認することはますます少なくなると論じている。
- コーディングボットに求められる 5 つの資質(簡潔さ、信頼性、探究心、自己認識、パーソナライズ)を提示し、それらが優れた人間の開発者に求められる資質と同じだと指摘する。当時のボットは最初の 2 つに寄っており、残りはまだうまく機能していないように見えたと判断しつつ、いずれそれらも備わると予想している。
- 当時のコーディングボットを、態度は良いがときどき嘘をつくジュニア開発者のようなものだと特徴づけ、正確な指示を与え、出力を適切に検証することがより重要なスキルになると論じている。
- プログラミング言語の文法を明確に理解していることよりも、コーディングボットと対話する能力のほうが重要になり、コーディングは今日のスプレッドシートとほぼ同程度のスキル、つまり専門分野ではなく知っていると便利なものになるかもしれないと予測している。
- 生産性に関する主張は、講演者の知人からの伝聞として報告されている。自身も元開発者であるスタートアップの代表が、エンジニアのために約 6 か月間エンタープライズ版の Copilot ライセンスに費用を出したところ、特にジュニア開発者の間で生産性が明らかに向上したと報告した。さらに、単一のツールに頼ることで生じるフィードバックループのようなものを避けるため、コード生成用とユニットテスト用で 2 つ目の AI ツールを併用する計画だったという。
- 開発者の生産性には単一の定義がないと指摘し、コーディング時間の短縮、コード品質の向上、開発者体験の改善、コーディングスキルの向上を候補として挙げている。
- 無許諾のコード再利用、学習用画像、ハルシネーションによる出力、ニュースコンテンツをめぐる生成 AI の訴訟を、規制が追いついていない領域として取り上げ、さらに労働市場での雇用の置き換えを懸念として挙げている。
- 講演者のキャリアに関する助言は、技術は変わり続けるため、強く技術志向であることよりも、問題定義、コミュニケーション、リーダーシップのほうが重要だというものである。
背景
この記事は現在の状況の説明ではなく、ある時点のスナップショットである。講演は 2024 年 3 月に行われており、記事もそれを明記している。たとえば GPT-4o は講演より後に登場したため扱われていないと述べている。ツールの説明はその時点のものであり、Copilot のライセンス区分とその機能差、2023 年末にリリースされた Copilot X の機能としての Copilot Chat、GitHub が Copilot の説明を AI ペアプログラマーから AI を活用した開発者プラットフォームへと変えたことなどが含まれる。調査対象の生成 AI ツールの約 3 分の 1 が講演の時点ですでにサービスを終了していたという記事自身の指摘は、このレイヤーの変化がいかに速かったかをよく示している。
記事はツールのカテゴリを第三者による生成 AI の全体像の調査から引いて再掲しており、Copilot の生産性への影響の測定に関する既刊の記事を読者に紹介しつつ、その詳細は明示的に割愛している。記事自身の生産性に関する根拠は伝聞である。講演者がシリコンバレーの知人から聞いたことと講演者自身が観察したこと、そして記事が他者から伝える数値であり、記事自体が実施した研究ではない。