この記事は、サイバーエージェントの 2025 年の開発者向けアドベントカレンダーの最終日のエントリであり、サイバーエージェント の AI Driven 推進室に所属し、サイバーエージェントグループ全体での AI 活用と開発者の生産性の推進に取り組むエンジニア兼クリエイターによって書かれている。ツール導入の話として示されているが、著者は、本当の主題は組織が動くように何かを「届ける」方法だと述べている。

議論の骨子は、大企業では、よいツールを作ったり導入したりするだけでは広まらないというものである。著者は社内での導入を社内プロダクトの go-to-market として捉え直し、社外で注目を生み出してそれを社内に還流させる戦略を説明している。その中心にあるのが社外イベント AI Code Agents 祭り ~ 2025 Winter ~ であり、その周囲で 7 つのテクニックが組み合わされた。

要点

  • 著者の出発点は、2023 年に Cursor を一人で使っていたことであり、その後 2024 年 9 月 11 日に Cursor 専用の Slack チャンネルを作ったが、当初のメンバーは著者だけだった。社内での講演やデモへの反応も乏しかった。
  • 記事はその難しさを規模と文化に帰している。連結従業員数 8,000 名以上、連結子会社 86 社(2025 年 9 月末時点)、チームごとに別々の Slack ワークスペースと独立した技術選定、そしてトップダウンで「明日から全員このツールを使う」ということがめったに起こらないボトムアップの文化である。
  • 2024 年秋、著者は代わりに「外から風を吹かせる」ことを決めた。X のトレンド、YouTube、技術コミュニティでの評判といった社外からの情報は、組織の壁を越えて一度に全員に届くとされる。著者は、ガイドラインや研修、トップダウンの方針も有効な手段であると認めつつ、組織の文化と自身のスキルを踏まえると、社外イベントが最もレバレッジが大きいと判断した。
  • テクニック 1:最初の DM を送る。人脈がなかった著者は、影響力のある登壇者を、相手自身の仕事を具体的に引用し、提供する価値を数字で示し、依頼を小さく答えやすいものにしたコールド DM で勧誘した。記事によれば、声をかけた登壇者は依頼を受け、そこから紹介もつながった。
  • テクニック 2:誰に向けたものかを幅広く決める。登壇者の構成は、サイバーエージェントの経営陣、技術系インフルエンサー、社外の実践者、グローバルな視点、社内の実践者、非エンジニア、若手エンジニア、海外の CEO であり、それぞれがメッセージをどう広めるかという観点で選ばれた。著者は特に、経営陣が登壇することで社内でのメッセージの力が高まったと強調している。
  • テクニック 3:デザインに投資する。Canva で作り AI 生成のビジュアルを使ったランディングページや、3 メートルのポスターなどである。品質は、耳を傾けてもらうための無言のメッセージだという考えに基づく。
  • テクニック 4:AI で障壁を取り除く。海外の登壇者のために、英語と日本語の間の AI リアルタイム通訳サービスを使った。
  • テクニック 5:オンライン視聴者をメインの観客として体験を設計する。事前登録のうち 1,300 名以上がオンラインだったためである。記事によれば、オンラインの満足度(4.5)は現地(4.3)をわずかに上回った。
  • テクニック 6:共有されたビジョンを通じて協力者を集める。登壇者と運営者は、報酬も義務もないまま時間を割いた。
  • テクニック 7:反応がなくても発信し続ける。執筆時点で Slack チャンネルのメンバーは 500 名を超え、サイバーエージェントでは職種を問わず約 1,000 名が Cursor をアクティブに利用しており、Claude Code と Codex がエンタープライズプランで導入され、Cursor も検討中だった。
  • 記事は、うまくいかなかったことも挙げている。ストーリーのないまま技術的な説明に頼った最初の社内講演、ドキュメントだけに頼ること、そして全員に向けた 1 つのメッセージという発想である。経営陣、ベテラン、若手エンジニア、非エンジニアは、それぞれ異なるものに価値を置くとされる。
  • 著者は、AI ツールを月に 1 回程度評価し直すことを勧め、第一印象でツールを見限らないよう警告し、複数の AI コーディングエージェントを常用することを、マルチベンダー・マルチエージェントのアプローチとして説明している。

背景

これは取り組みを主導した本人による一人称の記録であり、会社自身の開発者ブログで公開されたものである。報告されている成果はこの記事独自の数字であり、テクニックは検証された手法ではなく著者の経験である。記事はこの取り組みを、2028 年までに開発プロセスを完全に自動化するという会社がその後に掲げた目標と、AI Driven 推進室に結びつけている。記事によれば、AI Driven 推進室は、エンジニアと AI エージェントが協働する自律的な開発体制を全社的に構築するのを支援するために設置された。イベントから生まれたユーザーコミュニティが AI Agent User Group(AIAU) である。