この記事は Toss のデベロッパーリレーションズ・マネージャーが書いたもので、同社が AI Surf Day と名づけたプログラムを通じて AI トランスフォーメーション(AX)にどう取り組んだかを説明している。著者の出発点は導入の偏りである。前年から、エンジニアだけでなくプロダクト、デザイン、スタッフ部門の人々も自分の領域で AI をどう使うかを模索してきたが、一部のメンバーはまだ AI を遠いものと感じており、とりわけ非開発職の人々はその差を感じて不安を募らせていた。著者は、決まった正解がないために多くの企業がそれぞれ異なるやり方で AX を進めていると述べ、AI Surf Day を Toss 独自のやり方の 1 つとして紹介している。

AI Surf Day は、4 月から 6 月までの毎週金曜日を、AI を自由に試し業務に適用する日とし、月曜から木曜は通常業務に充てるというものだった。名前とコンセプトは、記事がジョン・カバットジンの言葉とする「波を止めることはできないが、サーフィンを学ぶことはできる」に由来する。AI の進歩のペースを押しとどめることはできないので、それに一緒に乗ることを学ぼうという考えである。著者は、これが単に全員に AI を使わせるということを超えて、Toss を AI を前提に働く会社にするための文化的な仕掛けになったと述べている。

プログラムには 3 つの固定の構成要素――社員が運営するクラブ、事例共有セッション、エバンジェリストのネットワーク――に加えて、ときおり単発の企画があった。そのうちの 1 つが OpenAI とのコラボレーションデーで、エージェント型ワークフローを中心に据えたハッカソンが含まれていた。記事は、プログラムは 6 月まで実施される予定で、継続するかどうかはまだ議論中であり、形式よりもそれが何を残したかのほうが重要だと述べて締めくくっている。

要点

  • AI Surf Club では、社員が AI に関するテーマで自由形式のグループを立ち上げ、参加できた。記事によれば、プログラムの開始とともに約 200 のクラブが作られた。挙げられている例には、すでに AI を使っている人々が自分の失敗を共有してガイドにまとめた AI アンチパターンの勉強会、まだエージェントツールをインストールできていない同僚のための「ステップ 0」グループ、そして記事によれば 1 か月以内に外部からの苦情を AI で監視するポータルを構築し、あわせて苦情への返信文の下書きと苦情の分類を自動化した顧客保護チームがある。
  • あるビジネスマーケティングチームは、社内の AI Native Workshop を通じて AI 関連の仕事を Builder、Curator、Operator、Scouter の役割に分けたと説明されている。その目的は、「AI をうまく使おう」で終わらせるのではなく、各人の成果物を同僚がそのまま真似したり自分の仕事に応用したりできる形で残すことだとされる。
  • AI Surf Weekly では、社内のベストケース、得られた教訓、最近の AI に関する知見が共有された。プログラムに先立ち、著者は社員の AI 活用事例を調査し、異なる組織にいて似たニーズを持つ人どうしを引き合わせていた。そこから著者は、良い使い手と良い事例を紹介すれば、さらなる良い事例が自然に生まれるという結論に至り、ツールごとのスキルのコツではなくアイデアを共有することを選んだ。
  • 記事は、AI をうまく使うことの意味は組織や職種によって異なり、組織にとってそれは個人が AI ツールをどれだけうまく扱えるかではなく、チームの既存のワークフローを AI を前提に再設計し、そのプロセスが浮かび上がらせる問題を解決することにかかっていると論じている。
  • その考え方に基づき、AI Surf Evangelist の制度では、技術的に最も習熟した人ではなく、チームへの AI の導入と普及に最も熱心な人が選ばれた。推薦は短い推薦文を添えて、4 月の第 1 週に Toss の全関連会社を対象とする公開チャンネルで集められ、142 人のエバンジェリストが選ばれた。3 か月間の彼らのミッションは、良い AI 活用事例をエバンジェリストのチャンネルに報告すること、自分の組織向けにオフラインのミートアップかワークショップを少なくとも 1 回開催すること、そして良い事例と知見をチームメイトに広めることだった。カルチャーチームはテンプレートとファシリテーションでワークショップを支援し、その多くはチームの仕事を AI を前提に再設計することをテーマとしていた。
  • 5 月 15 日の OpenAI とのコラボレーションデーは、ハンズオンセッション――開発者向けの Codex を中心とした開発ワークフロー(OpenAI Codex)のセッションと、非開発者向けの ChatGPT Agent による業務自動化のセッション――から始まり、その後に Agentic Architect と Agentic Operator の 2 トラックによる 2 時間半のミニハッカソンが行われた。
  • 記事の説明によれば、Architect トラックの優勝作品は、Codex に iOS Simulator を自ら操作させて機能を検証させるものだった。コメント機能の作成を依頼されると、Codex は機能を実装し、ログインし、コメントを投稿して動作を確認し、計画、コーディング、ビルド、シミュレーターでの検証、修正、繰り返しというループを完了まで回し、証拠として動画を残した。Operator トラックの優勝作品は、新たに作成された商品データを AI エージェントがあらかじめ定義された分類体系に照らして一次分類し、担当者にメッセージを送り、担当者が管理ツールで結果を承認または却下するというもので、反復作業を再利用可能なエージェント型ワークフローに変えたものと説明されている。

背景

この記事は、プログラムを運営した組織の当事者による、その一部を設計した人物の手による一次報告であり、参加者の反応を測定された成果ではなく引用によって伝えている。記事自身の留保は明確である。Toss は正解集を持って進めているのではなく、一緒に実験し模索している最中であり、著者は会社がうまくサーフィンできているかどうかはわからず、変化は急激なものになるかもしれないし緩やかなものになるかもしれない、としている。著者の結びの判断は、AI Surf Day が残したものは学びのために確保された時間枠と、「これを試したらこうなった」を人々がためらわずに共有する雰囲気であり、プログラムや制度よりも文化と人のほうが重要だというものである。