本論文は、ソフトウェアエンジニアリングにおいて生成 AI(GenAI)が実際にどのように導入されているかの概観を示すことを目指している。その根拠は、導入が進んでいるにもかかわらず、これらのツールが実務でどう使われ、何をもたらし、どのような問題を持ち込み、組織と職業にとって何を意味するのかについて、実証的な証拠がいまだ乏しいという点にある。著者らは既存の文献がこうした技術的、人的、組織的な要因に散らばっていると捉え、本研究を、SE のすべての知識領域、幅広い GenAI ツール、利用と非利用、利点と課題、測定、制度化、予想される長期的影響を一度に扱う単一の調査として位置づけている。

方法は、クローズドな質問とオープンな質問を組み合わせ、国際的に配布されたオンライン質問紙であり、2025 年 5 月から 11 月まで実務者が回答できた。223 件の回答のうち、37 か国からの 204 件が使用され、最も多いのは米国(24)、ブラジル(21)、トルコ(19)であった。参加者は便宜的サンプリング、目的的サンプリング、スノーボールサンプリングによって集められ、同じ組織に送る招待は最大 2 件とし、ある国で十分な回答が集まった時点でその国での募集を止めた。自由記述の回答はグラウンデッド・セオリーの手順に従ってコーディングされた。報告された SE 活動は ISO/IEC/IEEE 12207 のソフトウェアライフサイクルプロセスに、報告された課題は AI システムの品質モデルである ISO/IEC 25059:2023 の品質特性に対応づけられた。サンプルが非確率的であるため、割合はブートストラップ法による信頼区間とともに報告されており、著者らはこれが母集団レベルではなくサンプル内のばらつきを表すものだと強調している。

全体として浮かび上がるのは、すでに日常的になっているものの、ガバナンスも測定も弱い導入の姿である。実務者はサイクルタイムの短縮と品質の向上を報告しているが、その大半はどちらも客観的に測定していない。また組織は、ツールへのアクセスを配ることには長けているが、トレーニング、ポリシー、目標の整備ははるかに遅れている。著者らは、実務者、組織、政府が場当たり的な導入を超えて、より体系的なアプローチへと進む必要があると結論づけている。

要点

  • 回答者の約 80%(79.44%)が SE 活動で GenAI ツールを使っており、残りはまったく使っていない。
  • 理由を答えた非利用者 38 人のうち、最も多かった障壁は必要なスキルの不足または時間的制約(23.34%)で、次いで必要性を感じない(21.31%)、出力品質への不信を含む GenAI ツールの成熟度不足(18.78%)が続いた。著者らはこれを、信頼性と正確性を主要な阻害要因として描く他の調査と対比し、自分たちの非利用者に見られるのは信頼のギャップではなくスキルのギャップだと解釈している。
  • 実装(コーディング、コード生成、コード補完)が群を抜いて最も多く報告された用途であり(71.01%)、次いで検証と妥当性確認(24.13%)、ブレインストーミング、知識検索、学習、問題解決のために著者らが設けた「個人的な支援」カテゴリー(22.73%)、保守(22.11%)が続く。要求、設計、プロジェクト計画といったライフサイクルの初期フェーズでの利用はあまり多くない。
  • 汎用の対話型アシスタントが大半を占める。ChatGPT は利用者の 62.38% が挙げており、Copilot(19.85%)、Gemini(19.08%)、Claude(15.84%)を大きく上回った。社内で開発したツールを挙げたのは 3.65% だった。
  • 利用頻度は高い。利用者の 51.9% が GenAI ツールを「常に」使い、14.4% が 1 日 1 回、25.3% が週に数回使っている。
  • 最も多く報告された利点はサイクルタイムの短縮(54.42%)で、次いで品質の向上(34.67%)、学習の支援(18.12%)、問題解決の支援(16.05%)が続く。
  • 以前は 8 時間かかっていたタスクが GenAI を使うとどれくらいかかるかという問いには、43.05% が 4 時間、26.61% が 2 時間と答え、約 95% が生産性の向上を感じていると報告した。82% は、GenAI ツールによってより質の高い仕事ができると同意した。
  • 回答者の 58.15% は、規模、生産性、品質について客観的な指標を何も使っていないと述べた。使っている回答者の多くはアジャイルの指標、すなわちストーリーポイント(19.10%)とベロシティ(12.07%)を用いているが、著者らはこれらが AI による変化を捉えるように設計されたものではないと指摘している。
  • 最も多く報告された課題は、ハルシネーションを含む不正確な出力(47.70%)で、次いでツールとのやり取りやプロンプティングの難しさ(31.48%)、出力の検証とレビューの負担(25.89%)が続く。
  • 回答者の 64.57% が、自分の組織は GenAI ツールの利用を支援していると報告している。その中で最も一般的な支援の形はツールへのアクセスの提供(81.06%)で、ツールの開発やカスタマイズ(50.72%)、トレーニング(45.47%)、公開されたポリシーやガイドライン(41.08%)、専任の GenAI エキスパート(21.27%)、GenAI の利用に結びついた目標や KPI(19.08%)を上回っている。
  • 79% は、GenAI が 5 年以内に自分の役割を置き換えるのではなく再定義すると予想しており、21% は役割が完全に自動化される恐れを見込んでいる。それでも 54% は SE の職の数が減ると予想しており、84% は GenAI を自分の仕事に取り入れるのに必要なスキルを身につけられると自信を持っている。
  • 報酬についての見方は分かれており(45% は悪影響はないと予想し、31% は下押し圧力を予想)、GenAI が職場での社会的な交流を減らすかどうかについても合意はない(41% が同意、37% が不同意)。

補足

本論文の提言は、測定と制度化におけるギャップから導かれている。研究者に対しては、GenAI 支援による SE に合わせた測定フレームワーク、ガバナンスの成熟度と測定可能な成果を結びつける縦断的研究、そしてスキルと労働力への影響、特にキャリア初期の実務者への影響に関する縦断的研究を求めている。チームリーダーに対しては、欠陥率、コードレビューの所要時間、手戻りの頻度といった軽量な事前・事後の測定と、構造化されたピアラーニングや社内のプロンプトライブラリを推奨している。組織に対しては GenAI のガバナンスを戦略上の優先事項として扱うことを、政策立案者や専門職団体に対しては、GenAI リテラシーとプロンプトエンジニアリングをスキルとして認める、国際的に協調した規制とコンピテンシーフレームワークを推奨している。

著者らは自らのデータの限界を明示している。サンプルは非確率的であり、ブートストラップ法による信頼区間はサンプル内のばらつきしか表さないため、それ以上の一般化可能性の主張は避け、追試を求めている。また、報告された生産性と品質の向上は知覚にすぎず、どちらかを客観的に測定している回答者がごく少ないことを考えると、その信頼性はさらに疑わしくなると注意を促している。質問紙、収集したデータ、分析スクリプトはオープンサイエンスのリポジトリで公開されており、本論文は執筆過程で Gemini、ChatGPT、Claude、NotebookLM を使用したことを申告している。

ここで抽出した版は arXiv:2512.23327v2 [cs.SE] で、2026 年 4 月 1 日の日付が付されている。著者らの所属は、アイントホーフェン工科大学、イズミル工科大学、PUC-Rio、ブレーキンゲ工科大学、fortiss である。