サイバーエージェント の開発者ブログに掲載されたこの記事の筆者は、同社のコーポレート管理部門に所属し、ここ数年はエンジニア育成施策に取り組んできたメンバーである。記事は「AIナレッジ共有会」について報告している。これは、次の AI 時代に活躍できるエンジニアのキャリアを支援することをミッションとして 2025 年に設立された組織である同社の AI 駆動推進室が、個人だけでなくチームが AI による開発のやり方を変えられるよう支援するために立ち上げたプログラムである。
記事は、このプログラムを 2 つの先行施策の後に位置づけている。1 つは 2025 年 6 月に決定された、開発 AI エージェントへの年間約 4 億円の投資で、約 1,200 人のエンジニアを 1 人あたり月 200 米ドルで支援するものである。もう 1 つは 3 階層の生成 AI リスキリングで、全職種の 6,200 人以上の社員向けのプログラムから、1,000 人のエンジニア向けの講座までを含む。これらの施策によって個人には共通のスタートラインができたとされる一方で、AI 支援開発のベストプラクティスはまだ確立されておらず、多くのチームはなお手探りの状態だったという。
要点
- 同社が 2025 年に社内で発表した中期目標は、2028 年までにプロダクト開発チームを 5 段階の AI 成熟度レベル のレベル 4 に到達させることである。レベル 4 は、要件から本番デプロイまでの開発プロセスが完全に自動化された状態を指す。
- 共有会は、すべてのエンジニアに薄く届けるのではなく、チームから推薦されたプロダクトのテックリードなど、チーム内で AI 活用を主導できる人を対象とした。彼らが知識を持ち帰って広めるという考えに基づくものである。
- 各サイクルは 3 つのステップから成っていた。ナレッジの共有、参加者自身のプロダクトでの実践、そして共有会の 2 か月後の「アウトプットレポート」である。このレポートは、共有会の感想ではなく、知識を実際にどれだけ活用したかを問うものである。
- 2025 年 10 月から 2026 年 4 月までの 6 か月間に 4 回の共有会が開かれた。記事は、この分野の知識はすぐに古くなるため、この頻度が必要だとしている。テーマは、個人での活用からチームでの活用、特定のドメイン、そして組織の変革へと移っていった。
- 第 1 回では、個人向け(AI アシスタントから AI ワークフロー開発まで)とチーム向け(コードレベルの補完から、人間がほとんど介在せずに機能を開発する AI 開発チームまで)それぞれについて、5 段階の AI 活用の定義が共有された。個人向けのレベルを採用して定期的に計測したあるグループ会社では、平均スコアが 6 か月で 1.23 から 3.27 に上昇した。
- 第 2 回は、同社の AI オペレーション室が示した AI 駆動開発の中核フローのハンズオンだった。AI が計画を起草し、人間がそれをレビューし、AI が修正して実行し、人間が結果を確認してフィードバックする、というものである。
- 第 3 回は Unity 開発を扱い、社内での Unity MCP の取り組みも取り上げた。記事は、コードの編集に加えてコンパイル、アプリの実行、画面の確認が伴うため、Unity 開発は AI エージェントにとって難しいとしている。
- 第 4 回では、開発フローの分解からドキュメント化、スキル、半自動実行を経てプルリクエストの自動レビューに至る、プロジェクト単位の AI 駆動開発へ移行するための 9 つのステップが説明され、あわせて、全員がプロジェクトマネージャーとして振る舞い実装を AI に委ねるというマネジメントの変化も説明された。記事は、AI が作業しやすい環境はおおむね新メンバーが作業しやすい環境でもある、という観察を強調している。AI のために書き出したコンテキストがオンボーディング資料を兼ねるからである。
- 6 か月の間に、メディア・IP、広告、ゲーム、本社機能にわたる 96 プロダクトのキーパーソンが参加した。
- 第 3 回のアウトプットレポートでは、90% 近くのプロダクトが活用度の上位 2 段階のいずれかを選んだ。報告された効果には、要件定義と開発の工数の約 30% 削減、仕様確認と影響調査の工数の約 75% 削減、作成されるプルリクエスト数の 1.5〜2 倍への増加、コードレビュー 1 件あたり 0.5〜1 時間の短縮が含まれていた。参加者は事業部をまたぐコミュニティも形成し、自主的に中間のライトニングトーク・イベントを開催した。
- 第 4 回のレポートでは二極化が見られた。活用度を 4 以上と評価したプロダクトが 30% をやや上回った一方で、約 30% は効果を感じていないと報告した。記事の読み解きは、共有会はすでに進んでいるチームには提供するものが少なすぎ、遅れているチームにはハードルが高すぎたというものであり、すぐに効く万能の解決策はないとしている。
- 次のステップとして、同社は個人の AI 活用レベルの定期計測を全社に広げ、すべてのエンジニアがレベル 3、つまり複数の AI を並列に動かし、自らワークフローを構築できる状態に到達することを目標としている。また、全エンジニアを対象とした AI 駆動開発の e ラーニングプログラムも開始した。
背景
この記事はプログラムの担当者が書いたもので、自らの調査結果を報告している。効果の数値は参加プロダクトによる自己申告である。記事はこのプログラムを 2028 年の自動化目標に向けた全社施策の 1 つとして位置づけており、プログラムの成果にばらつきがあったことについても率直に述べている。